割り込むタイプのファストパスの導入は難しい

先日 有償の選択枝は待合室の空気を和らげる という記事を読んだ。「支払いをするとサービス向上、支払いをしないとサービス維持」という世界であれば成り立つけど、「支払いをしない = サービスは低下する」となった場合、その人は納得しないのではないかと思った。病院の待合室のような場合は後者に当たる。

Amazonプライム

もう何年もAmazonのヘビーユーザだけど、特に急ぐような物を注文することがないので、いまだにAmazonプライムに入らずに通常配送を使っている。ただここ一年ぐらいは通常配送で注文をすると、明らかに一日寝かしてから配送手続きが始まるようになってきた。昨日の朝に注文した本の場合、日付の変わった0:10ごろに発送手続きが完了した旨のメールが来た。

昔は、当日のうちに配送手続きがはじまることもあった。だからAmazonプライムユーザの満足度向上のため、あえて通常ユーザの優先順位を下げているんじゃないかと思ったけど、実はそうではないみたいだ。配送の現場はもはや限界で、そうでもしないと回らないような状況になっているらしい。Amazonのゴリ押し大量物流で、佐川・日本郵政が限界に!? という記事に、佐川急便や日本郵便の限界っぷりに関する記事があった。

Amazonは自社で運輸業に乗り出す動きがあるという。最近、佐川急便は同社に大幅値上げを打診。多くの運輸業者がその規模の大きさゆえに、取引を続けてきている。しかし、採算度外視の取引のために、現場が疲弊しているのが現実だ。佐川急便としてはこれ以上不採算事業はできないと、Amazonとの取引を断られることを覚悟で大幅の提案を行ったのだ。

実際に、Amazonの大量の取引は現場を大きく歪めている。

日本郵便では、Amazonとの料金は本社のトップ交渉で決まるために、支社・支局レベルではまったく数字が開示されていない。現場では、同社の物流量に追いついておらず、Amazonの郵送を優先する「計画配送」を行なう一部郵便局もあるという。休日中に配りきれない書留や特定記録郵便など(中身はクレジットカードやキャッシュカードだ)の郵便物を後回しにして、Amazonを優先しているのだ。

一方、荷物を受け取る立場としては、配送手続きが始まらなくても別に腹も立たない。お金を払ったら早くなり、払わなかったら普通という選択肢を出されると、どちらを選択してもストレスを感じなくなる。むしろ、お金を払わなくて済んだので、逆に得した気分にすらなるかもしれない。

これはAmazonプライムに申し込んだら、つまり追加でお金を払ったら、早く届くことがわかっている。だけどあえて「早く届かない方を選択している」という認識になっているからなんだろう。これが「配送手続きが後回しにされる」だと、また話は違う。

非課金者が不利益を被る場合、ファストパスの導入は難しい

見せ方による工夫の場合もあるが、「お金を支払わない場合は普通のサービス。もっといいサービスが欲しければお金を払いなさい」というラインナップになっているサービスは多い。例えば新幹線などの指定券・グリーン車、飛行機のビジネス・ファーストクラスの優先搭乗とか。

「ファストパス」や「優先パス」などで検索すると、ディズニーランドのファストパスに関する話がよく出てくる。このファストパスでは、発券した時点で集合時間が指定される。その時間に専用の入口に行くことで、すぐにアトラクションを利用できるというものだ。ただこれは行列に並ばずに優先的に入れるというのとはちょっと違う。行列の場所で待つのではなく、単に別の場所で時間を潰してくれればいい。いうなればファストパスがかわりに並んでてくれるようなものなので、つまり実質は並ぶ場所が変わっているだけだ。

たとえ有料でお金を支払っていたとしても、お金を支払わないと自分が受けるサービスが落ちる場合、釈然としない気持ちを抱く。病院や銀行の窓口、コンビニやスーパーのレジの待ち行列。これらに優先的に割り込めるファストパスを設けた場合、割り込まれた方は「本来かかるはずだった時間」よりも待ち時間が長くなる。Amazonプライムや飛行機の搭乗の例は、優先的に処理される時間があらかじめ織り込み済みだから、ストレスなく待つことが出来る。

例えば銀行やコンビニの窓口・レジでファストパスを導入するにはどうすればいいだろうか。人件費を無視できるのであれば、専用カウンタを設けるというのはひとつの手かもしれない。空いている場合は通常の人も処理するけど、あらかじめ「有料者優先窓口・レジ」となっていることで、「サービスの低下」を感じさせずに済む。

ディズニーランドやUFJのファストパスに通常の行列とは別の入り口があるのは、この理由なんだろうと思う。同じ入り口で割り込みをさせてしまうと、おそらく揉めてしまう。

優先処理をするだけのファストパスであれば、導入してもあまりコストがかからないので、結果、単純に収益を増やすことが可能となる。だからAmazonプライムと同種の構造のものは、今後ファストパスのようなサービスが増えてくるだろうな、と思った。